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サラリーマン生活30年 分野を限定せずに幅広いジャンルで旅、生活、興味のあることを 普通の会社員生活視点から情報発信してまいります。

出張という旅 岩手・青森 2019年6月

岩手 青森

 

 東北地方は広い。岩手県だけで四国全体に匹敵する。福島県の白河から青森までの距離が東京から京都のそれに匹敵するといえばわかりやすいだろう。しかし東北方面に出張する機会は多くない。

取引先数、社員の居住地分布などが、西高東低の冬型気圧配置的となっていて、出張の機会もそれに比例しくるからどうしても少なくなる。

 

 その広い東北地方のごく一部であるが、北東北への出張機会が訪れた。

しかも目的地が、このエリアの中心都市青森や盛岡ではなく、弘前と北上という地方都市である。なかなか行く機会のない地域で、そういう意味では楽しみな出張といえた。

今年度の営業上における重要推進事項として、来年度からのブランド刷新に備えて、取引上、不採算ラインの取引先とは、契約解除を促進することが決まった。

営業という職務は売上、取引先数、利益といった数字の拡大に向けた活動だ。

しかし企業活動の最終的目的が「利益」の拡大であり、取引しても利益を生まない取引先、」つまり取引金額が基準に達していない取引先とは、契約の解消が不可欠であるとの判断に、5月の管理職会議で決した。収益率の改善が急務であった。

 

この方針決定に沿って、6月以降、対象となる取引先と取引解消にむけて商談を進めていくことになり、北海道から沖縄まで数多くの取引先へ向かうこととなった。ますます出張の回数が増えることが予想された。

該当する取引先が全国津々浦々にあり、今回、弘前と北上と取引先に運よく連続してアポが取れたので、早々に向かうこととなった。いろいろな土地へ行けるのは大歓迎だが、商談内容はかなりヘビーな案件であるから、微妙な心境であった。

 

 2019年6月3日、仙台駅12時54分発のはやぶさ19号で新青森へ向かう。

せっかくの東北出張なので最大市場の仙台の小売店の状況を視察すべく、早起きして午前中に仙台市中心部を視察してきた。

趣味的な話となるが、はやぶさ19号はJR北海道のH5系の編成だ。外の帯がラベンダー色なのが目印だ。ドア内側が黄緑色で、車内の床面には雪の結晶をモチーフにした模様が描かれており北海道らしさの演出がされている。数多い東北新幹線の列車の中でJR北海道車の運用は少ないようだからとてもラッキーだ。

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はやぶさは東北の深い青空の下を北へ疾走する。盛岡を発車すると右手に盛岡赴任時代に住んでいたマンション、左手には岩手山が望めた。

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盛岡から新青森にかけて、八甲田山直下を通過する八甲田トンネルをはじめ、トンネルの連続となる。

仙台から90分ほどで新青森

新青森から乗り換えた奥羽本線弘前行きの普通列車は、昭和の香りがする旧いオレンジ色のディーゼルカー2両編成。ブルンブルンとエンジンをふかし、一歩一歩踏みしめるように弘前を目指す。

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小さな山を越え浪岡のあたりから、水田の向こうに岩木山が望めてきた。なんだかのんびりした感じになって、出張ではなくひとり旅をしている気分になってくる。

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弘前には15時45分頃定刻に到着。10年ほど前、桜の季節に弘前城へ家族と花見に来て以来だ。初夏の太陽はこの時間になっても明るくすこし汗ばんでくる。

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商談先へはタクシー。ドライバーのおじさんが何かとしゃべってくるが何を言っているのかわからない。さすが本場の津軽弁だ。

取引先の小売店の応接室に案内され、恐縮していると課長さんと担当者さんがやってきた。ふたりとも女性だ。東京なんぞ遠くからよくきてくれたと、たいそう感謝され、ますます恐縮してしまう。

世間話から本題に話を進めると、

笑いながら「そんなことだと思っておったですよ。でも残念だわ。」と課長さん。またまた恐縮してしまう。このあとも当社のブランドへの愛着がうかがえる話が延々と続いたが、最後に課長さんが「ウチが売っていないんだから仕方ないっしょ。わかりましたよ。」と告げられた。

課長さんの目元が潤んでいるように見えた。

 

今後の売場撤退の段取りなど少し打合せしてから弘前駅へ向かう。6月なので5時半でもまだまだ明るい。

今日の仕事は終わったので久々の弘前城へ表敬訪問したいところだが、今晩はかつて住んでいた盛岡が宿泊地なので、盛岡の街を少しでも歩いてみたい。さきほど来たルートを文字通りトンボ返り。

こんど弘前に来る機会は出張ではまずないと思われ、名残惜しいが青森行きの鈍行電車に乗り込んだ。

 

新青森から新幹線に乗り換えるとアッという間に時間が過ぎ、盛岡到着。改札口を通り、よく買い物に来ていた駅ビルフェザンへ。館内は改装して8年前とは大きく変わっていた。さわや書店フェザン店で岩手の本を立ち読みしてから駅前の通りを開運橋へ向かう。ゆったりした流れの北上川の向こうにだいぶ暗くなったが岩手山が見えた。

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今晩の宿はホテルメトロポリタン盛岡。ここにした理由は、住んでいたマンションに近いのと、近隣のスポーツクラブの温水プールを優待料金で利用できるプランがあったのでチョイスした。そのため水着も持参していた。

出張先で夜や朝にジョギングする人は結構いるらしく、おすすめジョギングコースの地図を配布しているホテルも結構見かけてきた。私は走らないが、健康のために水泳を少しやっているので、出張の時も可能であれば泳ぎたいと思っていた。

ホテル内にプールがあればベストだが、料金的に高いホテルが多くなかなかチャンスがない。またプールは夜9時くらいでクローズする所がほとんどなので、なおさら利用する機会に恵まれない。私はたいして泳げる方ではないが、旅先のプールで泳ぐ時間は至極幸せである。たいてい空いていて普段利用する区営プールとは雲泥の差だ。

施設内にプールがなくても今回のように提携しているスポーツクラブのプールが利用できるホテルもあるので、機会があればと思っていたところ、今回初めて体験することとなった。しかもここのスポーツクラブは盛岡にいた頃、家族で利用していた所なので懐かしい。

ホテルにチェックイン後、早速隣のスポーツクラブに向かう。フロントの女性が「すごく久しぶりですね。出張ですか?」と声をかけてくれた。

館内は以前とそう変わりなく、時間が一気に逆にワープしたようだった。

 

翌日は早起きして盛岡駅前から開運橋のあたりを散歩してきた。出張先で泊まった日の朝は貴重な自由時間。初夏の盛岡の空気は爽やかでほんとうに青い空のもと、岩手山が蒼々と街の向こうにそびえている。

岩手山を見ていると月日の経つのは本当に早いと思う。盛岡から引っ越して8年経ったとは思えない。長男は小学生になった頃だ。入学式の姿を思い出す。嵐のように月日は過ぎていったがいったい自分はこの8年間何をしてきたのだろうか?と自問自答する。

できることならもう一度8年前に戻ってやりなおしたい、とも思う。そんなこととは関係なく8年前と変わらず北上川はゆったり流れている。山や川に比べれば人なんてちっぽけな存在だ。

 

仕事モードに切り替えて盛岡駅発9時7分のはやぶさ108号に乗り込むと、わずか19分で北上に到着。盛岡始発で仙台まで各駅に停まる列車なので、同じ車両には私しかおらず、ガラガラだった。

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北上市は人口9万ほどの岩手県南部の地方都市である。

東北新幹線東北自動車道に加え、秋田港へつながる秋田道が開通してから、東北有数の流通、工業集積地として重要な拠点となっている。

一方で駅前を中心に市街地は、軒並みシャター街と化しており地方都市にありがちな光景だ。その昔は栄えたであろう商店街の中心地に、ひときわ目立つ大型商業施設があり、そこが本日向かう取引先である。

売場ご担当の方に案内され、社員食堂で商談となった。

昨日同様に取引の解消についての申し入れをさせていただき、最終的にご理解いただくことができた。担当の女性に「長い間本当におせわになりました。」とお礼のことばを頂戴し、逆に申し訳ない思いだった。昨日同様、当社製品への強い愛着心が伝わってきて有難い思いだが、現状の売り上げ状況では今後の継続は困難なのでやむを得ない。

後ろ髪をひかれる思いでタクシーに乗り込み北上駅へ向かった。

明日からは沖縄出張が控えている。わずか数日の間に青森から沖縄まで移動するので、なかなかハードだが日本の北と南を一気に見ることができる機会はなかなかない。

沖縄訪問に備えて、まだ昼前だがこれから新幹線で東京へ戻り、事務仕事を片付けることにする。

11時半ころのやまびこに乗車し、仙台ではやぶさに乗り換えると、浜松町には14時半前に到着。あっという間に東京の雑踏に戻ってきた。つい数時間前、盛岡で岩手山を眺めたのがうそのようだ。

新幹線は魔物である。