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サラリーマン生活30年 分野を限定せずに幅広いジャンルで旅、生活、興味のあることを 普通の会社員生活視点から情報発信してまいります。

出張という旅  徳島・愛媛・広島

徳島・松山・広島

 2019年8月20日からの出張は徳島、愛媛、広島を二日間で周るという強行スケジュールであった。

それぞれの街で本社を構える複数の小売店系列本部に、取引の見直しを依頼する難儀な商談が目的となっている。そのため初日は早朝の出発となった。

 当日、朝イチの横須賀線で品川へ向かう。初電でも結構多くの乗客数だが座ることができた。

 いつもならアクシデントに備え午前中の商談時には現地に前日入りするのだが、今回は前日の所用のため止むを得ず当日移動となった。

 品川で京急に乗り換え早朝6時過ぎに羽田空港へ。7時のJAL453便で徳島へ向かう。今回で3回目の徳島行きだ。

 最近では時間の流れがやたら早く感じるのと同時に早起きが苦ではなくなってきた。会社でそんなことを話すと、同世代の者は異口同音にみな共感してくれる。

 今回も寝過ごすことなく、無事に羽田空港第1ターミナルに到着した。

 

 早朝の羽田出発便を利用する際、密かな楽しみがひとつある。

羽田空港国内線ターミナルは1と2があるがどちらにもラウンジがあり、条件次第で無料で利用できる。ラウンジには大きく2種類あり、ANAやJALが運営する航空会社ラウンジと、クレジットカード会員向けのカードラウンジがあり、羽田空港ではPOWERLOUNGEと命名されている。

 どちらもソフトドリンクのサービスがあり、モバイル充電ができるスペースとなっている。航空会社ラウンジは自社の上級会員かアッパークラスの乗客向けのサービス、カードラウンジはゴールドカード以上だと無料で利用できる。

幸い、私はどちらのラウンジも利用できる条件が整っているので、どちらのラウンジも利用できる。特にANAラウンジは昨年の出張三昧のおかげでプラチナメンバーとなったことから利用資格が備わった。

 どちらのラウンジも甲乙つけがたいが、航空会社ラウンジはビールや日本酒などのアルコールも無料で飲み放題なので、お酒はあまり飲まない私でも夕方以降ならANAラウンジ一択となる。

 しかし早朝の羽田空港ではパワーラウンジ一択だ。なぜなら美味いクロワッサンが無料で提供されるのである。利用客数の状況で日別に差はあろうが、概ね7時半くらいまでは提供されている模様だ。

このパワーラウンジは座るエリアや通路も大変ゆとりがあり、ANAラウンジよりも快適な空間に感じられる。個人的にはパワーラウンジを利用することが早朝以外でも多い。第2ターミナル北ピアのパワーラウンジが特によろしく、何時間でも滞在していたいと思う。

 今回はJAL利用なので第1ターミナル内のパワーラウンジを利用した。ここはカジュアルな感じで出入りしやすい雰囲気。今回のように短い時間に利用にはちょうどいいかもしれない。

ここの冷たい飲み物は、機械抽出ではなく、ボトルからグラスに注ぐものなので、高級ホテルの朝食のような上質感がある。

グラスに牛乳を半分ほど入れ、アイスミルクコーヒーをつくり、さらにオレンジジュースに青汁をブレンドさせた自分製オレンジジュースでのどの渇きを潤した。

お目当てのクロワッサンを2個食して、寛ぐ間もなく搭乗口へ向かった。

 

 B767が見えてきたがすでに搭乗が始まっており私は最後に近かった。盆休み明けの平日早朝ということもあって機内はかなり空いていた。座席はクラスJの9K。さすがにクラスJはシート全体にゆとりがあり、前のシートとの間隔もひろく快適だ。

 会社のシステムで運用されている法人向け国内出張手配サポート、「JALオンライン」で、クラスJに無料でアップグレートできるキャンペーンを行っていたので今回はこちらを利用させていただいた。

 ほぼ定刻に機体は滑走路へ向かい離陸となった。離陸後10数分後には白い雲海から藍色の富士山が姿を現した。

 

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 徳島空港に到着後、ターミナル内のレンタカー受付に向かう。レンタカーは出張先でのありがたい移動手段だ。法人割引のおかげで、タクシーやバスなどを使うよりコストカットもできる。

 ターミナル脇に停めてあったワンボックスカーに案内され1分ほどでレンタカー営業所へ。

「盆明けで配車に余裕がでてきました。」とドライバーさんが教えてくれる。

カウンターで書類にサインして、係の人と車の周りを傷のチェックしながら1周する。

 運転席に座り、カーナビで取引先住所をインプットして出発だ。

 9時からと早い商談なのでひたすら空港から南下して、吉野川の長い橋を渡り徳島市内へ向かう。市内にそびえる眉山が見えてきて40分ほどで取引先に到着。

 商談は1時間を少々超え、10時過ぎまでかかった。予想していた以上に難航したものの何とか新しい取引体系について理解いただけた。

 

 気持ちをリセットして、徳島を離れレンタカーでまっしぐらに愛媛県の県庁所在地松山へ向かう。松山への移動手段をどうするか迷ったが列車で3時間半、車で2時間半強と1時間の差は大きく、レンタカーで松山乗り捨てを選択した。距離で200キロと久々の長距離ドライブだ。

徳島自動車道に入り、吉野川沿いに西へ西へと走る。吉野川沿いということは西南日本を九州東部から関東へ横断する世界第一級の断層である中央構造線に沿って移動していることになる。進むにつれて河岸平野の幅は狭くなるが、吉野川は水量豊かに悠々と流れている。

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吉野川S.A.

 

道はほぼ片側1車線の対面通行だが、通行量が少ないのでかなりスムーズに走れる。それに以前ほどスピードを出さなくなった自分に気づいた。年をとったせいか。

だんだん山の斜面が険しくなってきた。四国山地は想像以上に山深い。冬には雪も積もるし、西日本の最高峰は四国の石槌山だと思い出した。

 

徳島県のだいぶ奥まで走ってきたところにある吉野川SAで昼食をとる。徳島ラーメンを初めて食した。豚骨ベースに濃い醤油で味付け、甘い豚のバラ肉が乗っていた。なかなか個性的な味わいである。

 徳島の食でとても印象に残っているのが、別の出張時に宿泊した、ホテルの朝食バイキングで盛られていた生ワカメである。ぬめっとした舌触り、歯ごたえ、滑らかさと全ての面で、私の中のワカメ観がひっくりかえるくらいうまかった。わかめだけ何回も小皿に盛って飲み込むように食べた。あとで訊いてみるとそれは鳴門ワカメで旬は冬。まさに食したのは1月の出張時であった。

 

 高知方面と松山方面の分岐に差しかかると雨が降り出し視界が悪くなってきた。周囲は四国山地でとても山深い。かずら橋で知られ、深いⅤ字谷の続く祖谷渓が近いのも頷ける。

 さらに走り、丸亀方面からの合流が加わると交通量が増えてきた。香川方面から松山にかけて車の動線が太いのだろう。四国中央市付近で瀬戸内海が垣間見えたが、あまり視界の利かない中、スピードを抑えて松山へ向かう。

 松山中心部に入り、オレンジ色の路面電車が走る横をすり抜け、JRの松山駅とは少し離れた伊予鉄松山市駅近くのパーキングに車を預ける。駅ビルは高島屋と一体化しており規模が大きい。ただし店内は閑散としている。

地方都市の人の密度はこれくらいが平均なのかもしれない。

 松山市駅近くに昔は賑わっただろう銀天街という商店街があり、その一角に取引先がある。

 商談は淡々と進み、今後の取引改定について快諾いただくことができた。

さらに少し郊外の取引先に向かい、こちらは穏やかな空気の中での商談中、意外な抵抗があったものの無事に終了した。

 

今日は3つの商談で約4時間、移動で6時間以上と結構ハードだった。

もうだいぶ日が暮れてきたが最後のミッションが、今日1日のパートナーだったレンタカーとのお別れである。JR松山駅近くのレンタカー営業所前に車を横づける。名残惜しいが、今日1日行動を共にしてきたこの車ともここまでだ。

「お忘れ物はないですか?この車はこれからすぐに徳島へ戻すので、忘れ物あったら大変です!」と係の女性。なんでもこれから陸送トラックに載せて徳島まで今夜のうちに回送するとのことだ。車もほんとうにお疲れ様である。

 レンタカーと別れたあとは、市電、正確には伊予鉄市内電車で、大街道という松山城の入り口にある繁華街へ向かう。乗った電車は恐らく昭和以来走り続けているだろう年代物だったが、すれ違う電車には真新しいのもあった。どれもオレンジ色で愛媛ミカンを連想させる。

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松山に限らず、路面電車に乗るとその街の脈動のようなものを感じる。名脇役俳優のように路面電車は街を彩っている。

今夜の宿は「ANAクラウンプラザホテル松山」。このホテル系列は全国にあり、ほどよいリッチ感とANAのネーミングの安心感から規定料金内で宿泊可能な時はお世話にあることが多い。

 チェックイン後荷物を部屋に置いて、この界隈を散策してみる。松山は「坂の上の雲」の舞台ともなっている。主人公の秋山兄弟生誕の地がホテルの近くにあり、空手らしき道場となっていた。

 

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 ホテルに戻り、長かった今日一日を締めようと最上階のバーに入った。普段、家ではほとんどアルコールは飲まないが、出張で泊まる時は時間があれば、不思議とホテルのバーに向かう。バーテンダーとたわいのない会話をするのも出張先ではいい時間だ。

小一時間の間、客は私ひとりであった。

 

翌日も早朝から活動開始。高速船で広島へ渡るため7時前にチェックアウト。ホテル前から松山港行きのバスに乗車する。バス乗り場には、松山空港へ向かうバスを待つ人も結構いて松山の朝は早い

仕事で船に乗るのは北海道の奥尻島から江差へ向かった時以来だろう。12年ぶりだ。いずれにせよそう滅多にあることではない。

松山観光港は新しいターミナルで岸壁では高速船「祥光」が乗客を待っている。

 定刻に出航し、港をでると一気にスピードを上げ、波しぶきが窓をたたく。天気は良く瀬戸内の島々間を呉港経由で広島へ向かう。出張とはいえ旅の気分が高まる。

 呉を出航して間もなく異様な黒っぽい物体が海面を進んでいることに気づく。まさかクジラかなと目を凝らすと、なんと潜水艦が浮上航行していた。多分50メートル位の距離しか離れていないところを「祥光」は何事もないように潜水艦を追い抜いていく。

 

 航行している潜水艦を海上の至近距離から見るのは初めてであった。後で合流した広島のU営業担当に少々自慢げにこの事を話すと、

「ああ、あの辺で潜水艦は、うようよしていますね。」とそっけない反応だった。

でも呉といえば旧日本海軍時代は重要な軍港であったし、今でも国内有数の自衛隊の拠点基地であるから、潜水艦が行き交うのは日常的なのだろう。<

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広島港に9時20分に到着。下船して陸地のどっしりした安定感と安心感が靴底を通して伝わってくる。頭はまだ海上にいるようでクラクラしている。

フェリターミナル前から広島市電に乗り込み、広島駅近くの今日最初の商談先へ向かった。

取引先の入り口で広島在住のU営業担当と合流。商談は11時からである。

ここのバイヤーさんがかなり難攻不落な方で、今回も相当な抵抗があるかと覚悟して臨んだ。

案の定、いくつかの注文がでてきたが、想定内ではあったので、丁寧に説明しなんとか取引見直し案に合意頂くことができた。

予定より若干時間オーバーしたので急ぎ足で広島駅へ。

 

今回最後の訪問先は広島県東部の福山市。新幹線に乗り込み20分強で到着。駅ホームの横に福山城が見えている。新幹線のぞみ号の一部が停車する広島県第2の都市だが、駅前は寂れ感が漂っている。

駅近くのレンタカー営業所で車を拾い、この街に本社のある取引先へ向かう。

商談は、まとまらず持ち越しとなった。最終的には後日の再商談で多少の譲歩はあったものの想定の範囲で終了となった。

夏の長い夕日が瀬戸内の海にだいぶ落ちてきて、これから東京への帰途につく。U営業担当を福山駅でレンタカーからおろして広島空港へ向かう。最後、もうひと踏ん張りだ。

広島空港は福山市内から約1時間。空港近くのレンタカー営業所に着いた時は夕闇に包まれていた。

広島空港はやはり街からは遠かった。

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広島空港 B787