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サラリーマン生活30年 分野を限定せずに幅広いジャンルで旅、生活、興味のあることを 普通の会社員生活視点から情報発信してまいります。

出張という旅

出張という旅 

まえがき

 

私は2年ほど前、仕事柄、頻繁に出張で東京を離れることが多かった。日帰り、もしくは翌日、長くても3日で帰ってきていた。

手帳の予定欄を辿ると2019年は60日間の出張があった。会社の所定勤務日数は240日なので4分の1は出張していたことになる。その前の年もほぼ同様であった。

最初の頃は「次はどこに行くの?」と当時中学生だった息子がよく聞いてきたが、やがてもう何も言ってこなくなった。

たまに、辛子明太子やロイズの生チョコなどを土産に持って帰っていたが、私の小遣い事情を案じて

「お金がもったいないから買ってこないでいいよ。」との妻からの提言があり、今では土産も買ってこない。

このように私が出張でどこに行こうと、我が家の関心はなくなっている。そのくらい出張が仕事だけでなく日常生活の一部にもなっていた。

 

私はある一部上場企業の総合職として25年間務めてきたが、10回の車内異動があり、その内7回は転居を伴う異動であった。

転居を伴う転勤という制度が現代のライフスタイルバランス的発想から、世間では否定的な意見も多くなってきた。企業によっては地域採用の強化等で転勤制度を見直しているところもあるようだ。

家族のことを思えば転勤による犠牲的側面はたいへん大きいと思う。我が家も札幌で家庭を築いて以来、5か所の街を移り暮らしてきた。途中1年ほどの単身赴任もあった。

私自身は仕事という線で、辛うじて新しい生活に繋がりがあった。しかし妻と子供はようやく築き上げた生活基盤や友人たちとの別れを引っ越しの度に繰り返してきた。全てがリセットだ。つらく寂しい思いをしてきたことだろう。

でも私についてきてくれた。家族には感謝してもしきれない。

 

2017年、神奈川県エリアの拠点となる神奈川支店で勤務していた。

秋の気配があまり感じられない夏の延長のような10月半ばのある日、いつも通り朝8時前にオフィスでPCに向かっていたところ、いつもは9時半ころに出社する支店長が珍しくこの時間に出社されてきた。

 フロアに来るなり「今、時間いいですか?」

と声をかけられた。

 窓に面した会議室に入り、着席して開口一番「別事業会社の立て直しが急遽必要となり、貴殿に行ってもらうことになったので内示いたします。」

 大体このような内容の話であった。

 

 新しい事業所での私のポジションは、日本国内の営業部門の統括的立場である。

この事業所では小さいながらひとつのブランドを国内はもとより、近隣アジアの国にも展開している。そこはもう一つの海外担当部署が担当している。

 

 オフィスは東京本社のみだが、国内担当の営業担当者は、北海道から九州まで各地で在宅勤務のうえ各取引先に直接出向いている。

全国に散らばった営業担当者のマネジメントと、全国の得意先に必要に応じて商談に出向くことが私の主たる業務となる。必然的に「出張」という業務が頻繁に発生することになる。

 日本国内全域に関わる、というのには驚いた。

企業のトップ的立場でもない限り、このようなことはそうそうにあるものではない。今までの親会社ではせいぜい都道府県単位のエリア単位で担当領域が仕切られていた。

本社の担当者にしても日常的に全国へ飛び回る者はそうはいないだろう。転勤族から出張族への転身だね。と誰かに言われたがその通りである。

 全く今までと違う環境に少々戸惑ったものの別の感覚がぬくぬくとこみあげてきた。もともと家の中でじっとしてはいられず、出かけるのが苦ではない。旅行も好きである。

 

「旅」をウィキペディアで検索すると、「居所を離れてよその土地へ行くこと」と記載されている。旅は好きだがそもそも就職して以来、住んでいた場所が沖縄やら北海道やら、東京から見たらまさに旅先になるようなところに住んでいたわけで、居場所を離れる、すなわち旅に出る必要もあまりなく、それほど旅に出ていたわけではなかった。

出張という行為も目的こそ「会社業務」にあるが、広義的に見れば旅の一種と解釈ができ、私はそう考えることにした。

仕事で日本中色んな土地へ行ける。各地の名産品を食すことができる。飛行機乗ればマイルも貯まる。これほど恵まれたことはない。

かつて転勤で生活した街を辿ることにもなるので、これもまた楽しみである。

もちろん目的は仕事であるから自分の時間はかなり制限されることになるが、自分の本来のオフの時間も犠牲になるのだから、その分出張という名の旅を楽しむことにした。

 アメリカの実業家であり、アップル社の共同設立者であるスティーブジョブス。彼の名言の中に「旅の過程にこそ価値がある」というものがある。

結果を出しつつ過程にも価値を見出すことの大切さを表していると思う。出張でも同じだと考えた。出張先で業務を全うすると追う結果だけで満足してしまってはもったいない。その過程に価値を見つけてこそ有意義なものになると思う。多少の屁理屈はお許し頂きたい。

 

このようなことで、日本各地を行き交った2年余りの出張生活の中から、幾つかの出張過程における出来事や、発見、思ったりしたことを、コロナ禍前のいち会社員の出張風景として、当時の日記や記憶をつたなくたどっていきたいと思う。

本来の出張業務内容については、本書の趣旨と離れることになるので殆ど記してはいないがきちんと業務遂行はしている。

誤解の無いよう、この場でご報告させていただく。

 

出張の話

 

 出張に出向く際のスケジューリングはとても重要である。プライベートの旅ならば自由気まま、というのもありだが、出張では当然そうはいかない。

前後の社内外の予定など様々な制約のうえで、いかに効率よく移動できるかを探る作業は、手間がかかるがなかなか楽しくもある。

段取りとして、目的の場所や日時が定まったら、前後の業務日程をにらみつつ、日帰りか泊りかを決定する。

 次に、宿泊有りならばホテル手配、そして移動手段の選定とチケット手配となる。

 福岡や札幌なら飛行機、仙台や名古屋、大阪なら新幹線でほぼ確定だが、大阪での仕事の後、九州方面などへ向かう場合なども想定され様々な移動ルートからベストな手段を見出すことが必要だ。

 今ではルート検索アプリのおかげで簡単にルート検索ができ、スケジュールが立てやすくなった。特に点から点への検索では検索アプリが鉄板である。

 しかし複数の出発地や目的地から最善のルートを探す出すためには、全体的に俯瞰しながら考える必要があり、昔ながらの紙ベースの時刻表の出番となる。新幹線や航空会社の時刻表が駅や空港カウンターで無料配布されているので、重宝している。

会社で紙の航空時刻表を眺めていたら「今時、紙の時刻表なんてあるのですか!」と驚かれた。驚くには大袈裟だと思うが時代を感じさせられた。アナログな手法で行程を作成するのは、なかなか楽しいものである。

 

出張は久々なのでルールについて総務担当者に早速尋ねようかと思ったが、自分の業務のことなので自ら社内の出張規定を調べてみることにした。特に航空機利用の範疇について知る必要があった。

すると、

①      陸上交通機関で5時間以上かかる場合

②      新幹線含む鉄道指定席特急券代より航空料金が安価な場合(空港までの交通機関代を含む)

このいずれかがあてはまれば、航空機が利用できることがわかった。そ

 宿泊の規定は知人宅泊とホテル等利用の場合で対応が違い、ホテル泊の際は上限1万円である。

また、もう実際に適用されるケースはほぼ皆無と思われるような、夜行寝台列車利用の場合はB寝台に限る、などの規定や船舶利用の規定もある。可能性が少しでもあるケースについては削除することなく網羅しているようだ。

 限られた規定に沿ってスケジュールを組むのも妙味があり、これも一種の出張の醍醐味だと後々思うようになった。

次回から、実際の出張を振り返ってみたいと思う。