musakoman7.blog

サラリーマン生活30年 分野を限定せずに幅広いジャンルで旅、生活、興味のあることを 普通の会社員生活視点から情報発信してまいります。

出張という旅 熊本 2019年7月

熊本

 

 私は列車の出発が1時間遅れると、かなりの不安と絶望感におそわれ、三十分遅延でも同様にかなりのストレスとなり、自分の我慢弱さに少々情けなくなる。

 列車がそこまで遅れることは人身事故を除けば滅多にないのだが。

ところが飛行機の出発が一時間遅れるとなると「あーあ仕方ないか」と早々に諦めの境地に入り、さほどストレスとはならない。見たところ同じ場にいる周りの乗客たちの反応も、同じような傾向に感じられるのは気のせいであろうか。

 推察するに、遅延する頻度は列車より飛行機の方がはるかに多く、理由が天候に起因するなど半分諦めに近い感覚があるのが大きい と思われる。

何より令和の世になっても飛行機は空を飛ぶ特別な非日常的なもので、空を飛んでしまえば速いという特殊性が、飛行機遅延に対する思いを寛容にしているようなら気がする。

時間をつぶすにしても駅と空港では、空間的にも気分的にも空港の方が勝っている。

 移動にあたり陸路でも空路でも、遅延や運休などに遭遇したくはないが、少なからず当たってしまうことがままある。

幸いなことに、私の普段の行いのせいかどうか別としてこれらのトラブルに遭うことは、出張頻度に比して少ない。新幹線や特急でのアクシデントは皆無に近く、飛行機も多少の遅延は日常茶飯事だが大きなアクシデントに遭遇する事はあまりない。

しかし、あまり発生しない中でも二度ほどアクシデントに遭遇した。不思議とその二回とも福岡出張でのことだった。

 

 二〇一九年七月一七日、羽田発18時ANA269便で福岡空港へ向かった。熊本と福岡での商談に備えて前泊移動である。

 順調なフライトで玄界灘上空まで来たところ、「福岡空港、雷雲の影響で着陸ができない状況です。しばらく上空で待機します」との機内放送が流れた。

 暗闇の中に雷光が明滅しているのが見えるが、揺れはそれほどでもなかった。玄界灘の上空を10分くらい旋回しただろうか、機内放送で「天候の回復が見込まれないため、当機は長崎空港へ向かいます。」とのアナウンスが流れた。さらに「このあとの対応につきましては長崎空港で地上係員よりご案内の予定でございます。」とのこと。

思っていたより大ごとになってきた。機内は8割方埋まっているが、少しざわついた程度で意外と静かだ。皆さん大人だ。長崎空港から博多まで陸路で移動か?長崎泊か?費用は?など色々な?が頭に浮かんできた。

 玄界灘から長崎空港までは夜間のため何も見えなかったが、わずかで15分ほどでタッチダウン。離陸へ向けタキシング中の737の背後の空港ターミナルにNAGASAKIの文字が浮かんでいた。

 「ご案内までしばらくお待ちください。」との放送に言われるがまま待っていると、15分くらいしてから「福岡空港周辺の天候が回復してきたのでこれから給油後、当機は福岡空港へ向かいます・」との機内放送。

 しかしそれからが長く1時間ほどしてからようやく機体が動きだした。

 

 結局、博多駅筑紫口から徒歩7分ほどのアリエッタホテル福岡にチェックインしたのは、予定よりも3時間近く遅い23時を過ぎていた。

 目的地以外の空港に着陸するダイバートを初めて経験したが、不思議と苛立ちやイライラ感はなかった。

空での移動という非日常的行為の中で、ダイバートという特殊要因が、空間移動という特別な体験を増幅させ、貴重な体験として脳にインプットされたような気がする。

遅くなっても博多ラーメンだけは食べようと、ホテルにチェックインする前に、博多駅地下のSHINSHINに立ち寄りラーメンを食す。ラーメンをすすりながらANAアプリで他の便の発着状況を見てみると、私の搭乗した269便以外はほぼ定刻通りに福岡空港に離発着していた。見事にピンポイントで雷雲によるダイバードに当たってしまったようだ。

 

 翌朝、自分の家で寝ているつもりで目を覚ますといつもと感じが違う。そして今は博多にいるのだと気づく。

カーテンを開けると小雨模様。朝食をとりに1Fのレストランへ。このホテルはこざっぱりしていて宿泊代もリーズナブル。

博多の隠れ家的で密かなお気に入り。

廊下が外廊下となっているのが特徴で、部屋の戸を開けると外の空気を感じる。7月の福岡らしく昨晩からの雨の湿気が顔を覆う。

レストランのモーニングメニューは多からず少なからずのバイキングで量的にも丁度よろしい。イタリアン中心に味もまたよろしい。一度ランチやディナーも味わってみたいと思う。

 

博多駅発9時4分の九州新幹線「さくら」で熊本へ。さくらの指定席は新幹線の大振りな車内にグリー車並みの二人掛けシートで通路挟んで4人掛けだから快適だ。東京に直結する新幹線のぞみではこうはいかない。

小雨の中わずか40分弱で熊本着。ホームからエスカレーターで1Fコンコースに出ると巨大な「くまモンの」上半身がお出迎え。

f:id:northpeakblog:20220407231623j:plain

熊本駅のクマモン

 

f:id:northpeakblog:20220407231808j:plain

 

改札口出ると熊本在住のS営業担当の姿が見えた。巨大なくまモンを見た直後なのでS担当がスマートに見える。

ここからレンタカーで商談先へ向かう。20分くらい走り、郊外の工業団地の一角にオフィスがあった。

今回の商談内容はかなりヘビーなので難航が予想された。かなり以前から取引させていただいているので感謝の意を表しつつ、現状に即した新しい取引の形についての提案である。

 

商談の結果、多少抵抗はあったが何とか今後の方向性について合意を得ることができ、熊本まで来た甲斐があった。

商談が終わり、熊本市内中心部へ移動する。市電の脇をレンタカーですりぬけて、下通といわれる界隈へ。茶臼山という小高い丘の上に熊本地震被害から復興中の熊本城が見える。2回目の熊本訪問だが今回も熊本城へ行くことは時間的に無理だった。

平日の昼間ということで人の出はさほどではないようだが、博多は別格としても大分や宮崎よりは活気があり、九州内での熊本の立ち位置がそのあたりからも感じられる。市電が走っているというのも街を彩る大きな要素になっていると思う。

一方で何軒か取引のある小売店に立ち寄ってみたが、休日中心に郊外のショッピングモールに人は流れているようだ。地方都市によくみられる現象が熊本でも起きている。

昼食のころ合いなのでどこかで食べようということになり、熊本の名物グルメといえば馬刺しやれんこん、熊本ラーメンと言ったところが思い浮かぶが、結局ちょっとおしゃれな洋食屋に入った。

 

熊本からの帰途は、再度博多へ戻り博多駅周辺の市場視察の後、福岡空港から帰京するスケジュールとした。

熊本出張は、博多経由でかつ博多付近での業務とセットで予定を組むことが多い。実際、熊本へ空路直行したことは一度だけである。

理由として

  • 博多駅熊本駅が新幹線で40分程度と至近なこと
  • 福岡空港博多駅が地下鉄で10分程度と利便性が高いこと
  • 熊本空港が市街地から1時間以上と遠いこと
  • 福岡空港の発着便数が圧倒的に熊本空港より多いこと

といったことが挙げられる。中でも①の博多駅熊本駅の時間的距離を大きく縮めた九州新幹線の存在が大きい。新幹線の威力はこれくらいの距離でことのほか発揮する。熊本が主たる目的の出張でも、その前後で九州最大の市場規模である福岡での業務を入れることができることとなり、効率的な出張が可能となった。


 博多駅到着後は予定通り駅周辺の商業施設を視察してから福岡空港へ。福岡空港はリニューアル中で地下鉄から出発ロビーにかけて美しくなっている。

20分くらいの短い時間を利用してANAラウンジへ直行。まわりはビジネスマンらしきひと達でいっぱいだ。

ラウンジでのビール一杯が出張の終わりを実感させる。このまま東京へ帰るのはもったいないといつも思うが出張なので仕方がない。

 

18時半発ANA266便の機材は787だ。この機材は意外と搭乗する機会がなく、今回が2回目となる。10Kの非常口座席をアサインしていた。

非常口座席は翼の上にかかるケースが多いのであまり利用していないが、この機体の非常口は翼より前方に位置しているので、視界は良好、窓側でしかも隣を気にせずに出入りができるのでキープできればとてもラッキーだと思う。

f:id:northpeakblog:20220407232024j:plain

 

おまけに自動チェックイン機で席の埋まり具合を見たときは隣席が埋まっていたのだが実際は空いていた。

このような事象は実はたまに経験があり、ほどほどの搭乗率の時にあたることがある。数多い出張のおかげ私はANAの上級会員組織の上から2番目にあたるプラチナメンバーとなっており、もしかしたら搭乗率の状況次第では隣席をブロックしてくれているのかもしれないと思ったりする。そのような噂も聞いたことがあるが、公式なアナウンスはどこにもないので、あくまで個人的な希望的観測ではある。

帰りの機中はラウンジでのビールが効いたせいか珍しく睡眠モード。「ご使用になりましたテーブルとリクライニングを元の位置にお戻しください。」のアナウンスで目を覚ました。機は高度を下げながら館山上空を飛行していた。

今回の出張は当初の福岡、熊本に加え長崎というおまけがついてきた。業務の成果もあった。

飛行機は羽田空港に向け、最終の着陸態勢に入った。